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先生と生徒

第13章 絡まる心と体


悟との夜を思い出す。

強引に引き寄せられた腕。

低く囁く声。

ベッドの上で絡み合った熱。

そして、元カレとの出来事までもが脳裏に蘇る。

頭の中に鮮明すぎる記憶が溢れ、逃げ場を失う。

「……あの、」

かすれた声で口を開いた。

学長の眉がぴくりと動き、女の次の言葉を待つ。

「……事実、です。」

沈黙が落ちた。

自分の声が自分のものではないように聞こえる。

認めてしまった瞬間、すべてが崩れていく音が耳の奥で響いた。

夜「誰だ?」

短く問われる。

喉が詰まる。

名前を告げることはできない。

だが、曖昧に濁すことも許されないような空気だった。

「……生徒です。」

絞り出すように答えた。

その瞬間、学長の目が鋭く光った。

机に置かれた手がわずかに力をこめて握られ、紙がくしゃりと音を立てる。

夜「本当に、教師としての自覚があるのか?」

叱責の言葉が突き刺さる。

女は震えながらも俯いたまま、返す言葉を持たなかった。

喉の奥に重苦しい熱が溜まり、呼吸が浅くなる。

胸の奥で罪悪感と羞恥が入り混じり、抗いようのない快楽を知ってしまった過去が余計に重くのし掛かる。

それでも、否定できなかったのは――

あの夜の甘美さが、女にとって決して“間違い”と言い切れないものだったから。

学長は深く息を吐き、椅子の背もたれに体を預ける。

夜「……今後、この件は厳しく扱わざるを得ない。覚悟はしておけ。」

女の心臓が大きく脈打つ。

冷たい言葉が現実を突きつける。

学長室を出たあと、足が思うように前に進まない。

廊下の白い光が眩しく、ただ歩くたびに全身が重くなる。

だが同時に――

認めてしまったことで背徳の熱が体の奥からわずかに疼き始めるのを、女は止められなかった。
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