• テキストサイズ

先生と生徒

第12章 執着の果てに


机の上に無造作に置かれた1枚の封筒に、彼の視線が止まる。

白い封筒に黒いマジックで大きく書かれた乱暴な文字――

“次に会ったらただじゃ済まさない”

“お前は俺のものだ”

ぞっとするような文面が、短いながらも凄まじい執着を帯びていた。

甚爾は封筒を手に取り、しばし無言で睨みつけた。

紙の端が指先でくしゃりと音を立てる。

甚「……なんだ、これ。」

低く抑えた声がリビングに落ちる。

洗面所から出てきた彼女が、その手紙を見た瞬間、顔色を失った。

「っ……!」

視線が泳ぎ、喉が詰まる。

今にも泣きそうな顔をして立ち尽くす彼女に、甚爾はゆっくりと歩み寄った。

甚「……おい。答えろ。」

机に手紙を叩きつけるように置き、彼は彼女の肩を掴んだ。

強い力ではない。

けれどその声音には抗えない圧がある。

甚「誰だ。」

問いかけは簡潔で、逃げ道を許さない。

「……。」

彼女は唇を噛み、必死に声を絞り出そうとするが言葉が出ない。

甚「……俺に隠す気か。」

甚爾の目が細められ、その瞳の奥に冷たい光が宿る。

その視線に射抜かれ彼女の体は小さく震えた。

「……ごめん……。」

絞り出すような声。

彼女は両手を胸の前で握りしめ、涙を堪えるようにうつむいた。

「多分……元カレ、だと思う。」

その一言に、甚爾の顔つきが変わった。

甚「……は?」

短く低い声。

彼女は怯えたように頷く。
/ 127ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp