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先生と生徒

第12章 執着の果てに


靴を脱ぐことすらせず、土足のままフローリングを鳴らして進む。

彼「おい、勝手に入ってくんな!」

元カレが腕を伸ばして止めようとした。

だが甚爾は一瞥すらくれず、その手を強引に払いのける。

彼「ッ……!」

元カレの肩が揺らぐ。

だが甚爾は一切の関心を示さず、ただ彼女のもとへ真っ直ぐ歩み寄った。

甚「おい、大丈夫か……!」

荒々しくも焦りを帯びた声。

彼女は震える指先を伸ばし、必死に彼を見つめた。

「……甚爾……。」

名前を呼ぶだけで涙が溢れる。

安堵か、羞恥か、それとも恐怖からか自分でもわからなかった。

ただ彼の姿を見た途端、張りつめていた心が一気に解け声にならない嗚咽が喉を塞ぐ。

甚爾はしゃがみ込み、乱れた彼女の髪をそっと撫で上げた。

その手は普段の粗野な仕草からは想像もつかないほど優しい。

だがその眼差しは鋭く、すぐ横で立ち尽くす元カレに氷のような視線を向けていた。

甚「……お前、何した。」

問いかけというより、詰問。

室内の空気が一瞬で張り詰める。

彼「……だから、俺と彼女の問題だって……!」

元カレは苛立ちを隠さずに言い返す。

しかし声は震えていた。

甚爾の目が、言葉以上に圧力を与えていた。

甚爾は立ち上がり、ゆっくりと元カレへ歩み寄る。

甚「……俺の女に、手ぇ出したのかって聞いてんだよ。」

「なっ……は、離せよ……!」

元カレが後ずさる。

その背中が壁にぶつかる音がした。

彼女は必死に声を絞り出す。

「……やめて、甚爾……っ……もう……。」

泣きじゃくりながら呼び止める声に、甚爾は1度だけ肩を震わせた。

彼女の方を振り返り、その表情がわずかに揺らぐ。

甚「……クソッ……。」

深く息を吐き出すと、甚爾は元カレの胸ぐらを乱暴に掴み上げたが殴ることはしなかった。

睨みつける視線だけで、十分に圧を与える。

甚「2度と……2度とめいに近づくな。」

低く唸るような声。

吐き捨てるように言い放つと、甚爾は元カレを乱暴に突き放した。

元カレはよろめきながら玄関へ退き、歯噛みしながらも言い返すことはできなかった。
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