第2章 秘密の関係
外の空気は、夜とはまるで違っていた。
湿った熱気はもうなく、早朝の冷えた風が肌に刺さる。
新宿の裏通り。
昨夜、彼と出会った場所を通り抜け彼女は1人、駅に向かって歩き出した。
スマートフォンを取り出すと、時刻はまだ朝の6時半。
人の気配もまばらで、街が目覚めるには少し早い。
そんな静けさの中で彼女のヒールの音だけがカツン、カツン、と乾いた音を立てていた。
電車に乗って揺られながら、窓の外の風景を眺める。
すれ違う人々は皆、それぞれの朝を歩いていた。
自分もその1人であるはずなのに、なぜだか世界のどこにも自分の居場所がないような気がしていた。
——これは、正しいことだったのか。
わからない。
——ただ、彼の隣にいたままでは自分を保てなかった。
それだけは確かだった。