第1章 触れるだけの愛
「……本当に、それだけなの?」
「それだけ、って言っても……が先にとろけてきたら、止める理由なくなるよなぁ」
片手を口元に添えて、ちょっと悪戯っぽく笑うセンラ。
けれど、その目は真剣で、やさしかった。
「……そんなの、こっちが我慢できなくなるに決まってるじゃん…イジワル…」
「ふふ……が意地張ったまま、俺にじわじわ溶けてくるの、想像しただけでゾクゾクするわ。
今日はな、無理やりじゃなくて……お前が勝手に崩れてくるのを、ただじっと待ってたいんや」
愛を囁くわけでも、熱く求めるわけでもない。
ただ静かに、ただ“触れているだけ”。
それだけで満たされる感覚。
それだけで崩れてしまいそうになるほど、
センラの体温が、を包み込んでいた。
それは、
“押し付ける愛”ではなく、
“染み込むような愛”。
まるで、
背中越しに注がれる朝日みたいな愛のかたちだった。