第1章 触れるだけの愛
──朝の光が、カーテンの隙間からベッドに差し込んでいる。
静かな部屋。テレビもつけていない、音もない。
ただ、柔らかな陽の匂いと、温もりだけが満ちていた。
ベッドの上、掛け布団の中でぬくもりを分け合うふたり。
仰向けで目を覚ましたの背に、センラがゆっくりと寄り添ってくる。
まるで自分の居場所を確かめるように、無言のまま身体を預けるその動きは、目覚めの静けさと溶け合っていた。
「……ん、今日はオフやなぁ」
寝起きのまだ少し掠れた声。
背中越しに感じる体温が、ぴたりとくっつく。
センラの腕が、の体に絡み、胸元から腹にかけてぴたりと背中に沿うように密着してくる。
ぬくもりを逃さないように、まるで背中に自分を溶け込ませるような、深い抱きしめ方だった。
「……ふぅ〜……はぁ……」
首筋のすぐ後ろに感じる、湿った吐息。
思わず背筋がぞくりと震えた。
「……なぁ、……」
耳元に落ちてくるその声には、どこか甘ったるい熱がこもっている。
──ぐい、と。
背後から押し当てられる、センラの膨らみ。
それは決して激しくはなく、ただ“そこにある”だけの動き。
けれど、お尻の丸みに沿って、じんわりと主張してくる。
「……あかん、ずっと触れてたい。
お前のこの柔らかいとこ、朝から晩まで感じてたいわ」
声は低く、ゆっくりと。
だけど言葉のひとつひとつが、確かに熱を帯びていた。
けれどセンラは、それ以上は何もしない。
脱がすわけでもなく、擦りつけるわけでもなく。
ただ、肌と肌の上に“重なる”だけ。
「んっ……ちょ、センラさん……」
抗議にもならない声が漏れた。
「ん〜? なになに、感じてしもたん?」
くすくすと笑いながら、またぐり、と軽く押し当ててくる。
手も動かさない。言葉も足さない。
ただ、沈黙と密着が、ふたりの間を満たしていく。
「俺なぁ……お前の体が動いた時の“ムニ”って感触……
めっちゃ好きやねん。
たぶんこの先の人生、これだけでもええわ」
「……変態」
「ふふふ。
変態でええわ。お前限定の、愛し方やから」
その一言が、じわりと胸を満たす。
センラの腕の力が、少しだけ強くなった。