第1章 1
付き合ってそれなりになるので、相手を察することは容易くできる関係性であると思っていたが、「教える」という行為に関しては根本的な相性ってのがあるということを痛感した。
「あぁ、そうじゃない。ほら、お前の肘の角度おかしくなってるだろ。肘関節が90度になるように持て。」
「う…?うん。」
「ボールは接点と中心点の延長線の方向に向かって動く。それを計算して撞け。」
「う…ん?」
「強く打つと内角に寄る。逆に弱く打つと外角に寄るから、それも計算して打てばいい。」
「……。」
難しすぎる……景吾の教え方が本当に難しすぎる。物理的な基本の説明をしてくれているのはわかるのに…しかもわかりやすいように?教えてくれようとしてるのは分かるのに…全く頭の中で整理されない。言葉の記憶として箱の中に詰められてる感覚だ。
ちらっと悠美の方を見てみた。
「キューを持つ位置はここらへんじゃな。」
「ふーん?なんでここらへんになるの?」
「お前さんの身長からすると、ここらへんを持つのがちょうど打ちやすくてブレにくい位置じゃ。」
「…うん。」
「ここに向かって打ちたい時はここらへんを撞いて、ここら辺に当たるようにするんじゃ。強すぎたり弱すぎたりするとへんな方向に似てるき、適度な強さでの。」
「…ここじゃなくて、ここなの?こう打ったらここに当たるから、こう行ってこうじゃないの??」
「いんや、違うのぅ…。そう打つと、こうなるの。」
「…なぜ……」
あ、だんだん半目になってきてる。仁王さんは感覚的な教え方をするタイプらしい…でも、悠美は的確な根拠が欲しいと…
仁王さんの教え方の方がいいなと思いながらも、せっかくカップルでやってるんだし…と遠慮できていたのも、最初のうちだけだった。
「「メンバーチェンジっっ!!!!」」
私と悠美が叫んだのはほぼ同時だったと思う。
教え方の特性と、覚え方の特性から、私と仁王さん、景吾と悠美のペアリングにするように願い出た。
同じ台でやってるわけだし、少々ペアリングが変わっても、大きな問題はないはずだ。
きっと教え方と覚え方の違いによおる大きな壁に気づいていたのであろう男性陣も素直に頷いてくれた。