第7章 ホノオ
『…エンデヴァーさん、読みました』
本を読み終えエンデヴァーのいる隣室へ入るとエンデヴァーの鋭い視線がこちらに突き刺さる。
「なぜ、俺がお前を指名しここに呼んだか、わかったか」
『…私が、カルリアと同じ能力を持つ、とお考えですか』
「焦凍から聞いた。以前、敵と相対した時に我を失い暴れていたと」
『…確かに、その時も敵の炎への恐怖心から、』
「カルリアのその後はその本には書かれていないが、カルリア以外にも凶暴化した猫の女は何人か実在したそうだ。その現象を現地の人間はこう呼ぶ。
“炎猫獣“」
『えん、びょうじゅう…』
「炎で恐怖心を掻き立たせ獣の力を得る。その炎猫獣と化した女を兵力とした国もある。とある地域では今なお炎猫獣を最恐の個性と恐れられている」
『…?でも、凶暴化すると知性を失うのでは…?どうやって操って兵力に?』
「あぁ。だが、一部の人間の言うことは素直に聞き入れるという
噂では家族、親友、恋人など心を開いた相手の声は炎猫獣に届くそうだ」
「渡橋の場合は、爆豪ってことか」
USJの時、気がついたら勝己の背中に収まっていた。エンデヴァーの話が、嘘にも聞こえる話が、嫌に信ぴょう性を増していく。
『…私に炎猫獣の素質があるとして、エンデヴァーさんは私をどうなさるおつもりで?』
「焦凍はNO.1ヒーローになる男だ。炎猫獣であるお前とチームアップをすればさらに向かうとこ敵なしのヒーローになる」
『でも、私が炎猫獣になれたとして、彼の言うことを聞かなければ意味がないのでは?』
「お前が焦凍の言うことを聞くようになれば問題ないだろう」
『……?それはつまり、これから関係を築いて心を開け、と?』
「悠長なことは言ってられん。お前は今日から焦凍の婚約者だ」
「「はぁ?」」
エンデヴァーの至って真面目な表情から繰り出された妙案に、私と轟くんは揃って険しい顔をした。