第13章 ヒーロー
勝己との激しすぎるキスはしばらく続いた。酸欠になってしまうんじゃないかと思うくらい激しくて、頭がくらくらしちゃいそうなくらい甘い。
時折体の線をなぞるように体に触れられて、その度にキュッと反応してしまう。
『勝己……?』
唇が離れたと思ったらすぐに首元へ顔が沈んでいった。表情は見えない。
甘噛みされるわけでもなく、舐められるわけでもなく。
「オールマイトの話は、すんじゃねぇ」
『………ごめん』
小さい頃からオールマイトは勝己の憧れだった。もちろん、私にとっても。
その、オールマイトのあの姿。ショックだっただろうか。
私や出久は個性の秘密を知っているから、きっとこうなること予想できていた。はず。もちろん、平気ではないけど。
きっと、勝己には別の、感情というか、思うところがあるんだろう。
『ねぇ勝己』
「あ?」
『合宿の時、ごめん。怒らせたこと』
「うっせえ」
『…お願いだから、はぐらかさないでよ』
「何がだ」
『っだから、私たちの関係!』
顔が見えないのが焦ったい。耳元で呟かれるその声がくすぐったい。
「…テメェはどうしたいんだよ」
『…体だけの関係は、いや』
「…そうかよ」
かなり勇気を出して答えた。すると勝己はいきなり体を起こし離れていった。
いやだ。今、この空気で、離れたくない。
体が自然と動いていた。
『っ多分。好きなんだと思う。勝己のこと、』
「っ、」
窓から出て行こうとする勝己の背中に抱きついた。何気に、こんな風に抱きつくのは初めてかもしれない。
『…っだから、私と、付き合って欲しい…』
ずっとモヤモヤしていた。勝己に対するこの感情は何か。
でも、さっきキスをしていて思った。誰とするキスよりも勝己が良い。
乱暴でも、口が悪くてもいい。
「今更かよ」
『え、?』
「俺はお前と初めてヤッたあの日からずっと結婚まで見据えてンだよクソ猫」
『…え?待って、いつそんなやりとりした?私たち付き合ってたの?』
「俺の女だっつったろが!」
『紛らわしいわ!』
体が離れて目が合うとお互い照れてるのか鼻で笑ってしまう。
再び唇同士が触れ合い始めたが、父が帰ってきたのでこの日は解散となった。