第1章 カンケイ
「それでそれで??芹奈はなんでヒーロー科に来たの?」
カフェを出て駅前のベンチに腰掛けた私たち。2人のヒーロー科に入ったきっかけを聞いた後、その話題は私に投げかけられた。
『昔ね、個性がまだここまで広まってなかった時代にね、猫の個性を持った女の人を狙った性犯罪が多発してたの。見た目とか、あと、猫の個性を持った人にしか現れない独特な甘い匂いとかを求めてね』
「ほんとだ。芹奈ちゃんの匂いすっごい甘い匂いがする!」
『うん。この匂いね、異性にしか発揮しないんだけど、平常時にはリラックス効果があって、興奮時には…欲が…掻き立てられてしまう、というか…』
「そうなんだ…」
『それで猫の個性を持った人間は当時の十分の一にも満たない数になったんだって。今でも物好きな奴らは全国のあちこちに蔓延ってるって。それで、私が幼稚園生の時、お母さんは狙われてそのまま命を落とした』
日が沈みかけた駅前は先ほどよりも帰宅のためスーツを身に纏った大人たちが交差している。賑わっているはずの駅前広場なのに、私たちの周りだけ、酸素が薄れたような、生き物の存在を感じ取れないほどの静けさに包まれていた。
『だから、自分の身は自分で守りたいの!将来できるであろう家族のことも守りたい。親戚には、猫の個性なんてなくしてしまった方がいいって言う声もなくはないんだけど、それでも、お母さんから授かったこの個性、大事にしていきたいんだ』
「…そっか!一緒に頑張ろう!」
「うぅぅ…芹奈ちゃん輝きすぎてる…かっこいいよぉ!」
正直あまり声を大きくしては言えないこの話を、この2人にこんなにも躊躇せず話すことができたのはきっとこの2人の魅力なんだろう。良い友を持った。良い高校生活が送れる。
この時は呑気に考えていた。