第11章 オトマリ
『出久っ!!』
「芹奈さっ、くっ」
敵達の突然の襲来に混乱状況の中、出久は1人走り出した。一緒に行った方がいいかと思ったが、何しろ全体の状況が読めない。私はマンダレイのテレパスに従って相澤先生らの元へ向かっていた。
だけど、建物へ到着する直前に遠くから音が聞こえた。他のみんなには聞こえてなかったみたいだった。
私は猫の個性を持つ。猫にできることはだいたいできる。
猫並みとは言わないが、視力と聴覚は他の人よりも優れている。特に夜は人一倍目が効く。
確証はなかった。けど、遠くで聞こえたあの音が出久が敵と交戦した音だったら?出久はまだワンフォーオールを確実に使いこなせてはいないはず。
必ず怪我をしていると思った。
飯田くんに止められたけど、私はすぐさま空へ駆け出して音の方へ向かった。
崖の上へ辿り着くと、案の定出久はボロボロだった。
『っ洸汰くん、怪我は?』
「ないっけどっ」
『よく頑張ったね、もう大丈夫だよ。って出久!あんたその怪我で何しようとっ』
「洸汰くんを相澤先生のところまで届けて保護してもらうんだっ!それで、マンダレイに、伝えないといけないことがっ」
『わかったから!私が2人を運ぶ!お願いだから無理しないで!』
「敵たちの狙いはかっちゃんなんだ!何でかわからないけど、奴ら、かっちゃんを狙ってる!!」
『っ!?』
「だから、僕は先に行く。芹奈さんはあの敵を見張っていて欲しい。
ないと思うけど、起きて暴れ出したら危ないし、敵の仲間が回収に来るかもしれないっ!」
『ちょ、待って出久っ!』
出久は聞く耳持たずと言った感じで、洸汰くんを背負って走り出していた。
勝己が狙いって、どういうことなの、?
私も早く行って応戦した方が、
いや、でも出久の言う通りこの敵が起きるかも、仲間に回収されるかもわからない。見張っている必要性は十分にある。
私は拳を握り締め、倒れた敵を見つめながらその場に座り込んだ。