第11章 オトマリ
「あ、あの…かっちゃん、よかったら変わってくれない、?」
「うせろクソデクっ」
林間合宿3日目夜、肝試しをすることになった僕らはクジを引いて2人ずつのペアに分かれた。
『私じゃ不満?』
「そんなことっない、けど…」
僕はなんと渡橋さ、いや、芹奈、さんと。
芹奈さんのことが大好きなかっちゃんのことだから、ペア変われって言ってくると思ったけど…どうしたんだろう。
「かっちゃんと、何かあったの?」
『んー…怒らせちゃった』
「怒らせたって…かっちゃんのことを?」
『うん。でも、なんて謝ったらいいのか分かんなくてさ』
どうして、なんで。
小さい頃からかっちゃんは芹奈さんのことになると態度が変わった。芹奈さんに対しても暴言を吐いてるのを見たことはもちろんあるけど、空気感が他の人に対するそれとは全く違った。
俺のモノに触れるなという空気を発して、守っていたと思う。芹奈さんのお母さんが亡くなられた時も、かっちゃんはずっと芹奈さんのそばにいた。
そんなかっちゃんが、芹奈さんに怒るなんてこと…
『出久ってさ、恋、したことある?』
「へぇえええ!?」
『……何もそこまで赤くならなくても』
「ひや、、あ、いや、ご、ごめんっあの、えーっと…こ、こいっ!?」
『……出久に聞いた私がバカだったわ』
薄々…というか、勝手に2人は両思いなんだと思っていた。
特に、高校に上がってからの2人の雰囲気は今までとは違って、なんか、こう、更に関係が深まったというか…
『わかんなくなっちゃってさ。私、勝己のことどう思ってるのか』
「…どう、?」
『…友達、なのかな』
木に寄りかかりながら切なそうな瞳で空を見上げる芹奈さんの横顔は、すごく綺麗だった。今まで見たことがないくらい、儚くて、ふっと消えてしまいそうで。
「……僕なんかがわかったように言ったら怒られるかもしれないけど、かっちゃんは、多分、芹奈さんのこと、」
誰よりも大切に想ってるんじゃないかな
そう言った時の彼女の小恥ずかしそうな微笑みは、物騒な音にかき消された。