第11章 オトマリ
『っ誰!?』
出久によって倒された敵を横目に森に広がる青い炎を見ていると、背後に気配を感じ振り返った。振り返ったと同時に今まで見下ろしていた青い炎が目の前に広がった。
『っ!!敵っ』
炎が顔に当たる寸前で後ろへ飛び上がった。長身のつぎはぎの男が目に入った。
「流石の身体能力だなぁ。渡橋芹奈」
『こいつの仲間?回収に来たの』
「いやぁ…こいつはどうでもいい。このザマじゃなんの役にも立たねぇ」
男は鼻で笑いながら倒れた男を足で突いてる。何が目的だ。敵達の狙いは勝己だって出久は言っていた。
それじゃあ勝己を探しにここまで?それなら私が今すべきことは足止めか。
「こいつよりも俺が欲しいのはお前だ」
『…ん?私?』
「あぁ…お前の存在をずっと探してたよ。一緒に来い。大人しく着いてきたら優しくしてやるよ」
『優しく?何言ってるの。狙いは?』
両手の爪を鋭く尖らせ戦闘体制は整えている。だが、この男の個性はおそらくあの青い炎だ。油断ならない。
いつ炎猫獣になってしまうか。炎猫獣の素質があることはわかったけど、1人ではただの暴走猫になるだけだ。
轟くんか、勝己がいれば…
「炎猫獣。それで伝わるな?」
『っ!?』
「やっぱりな。長居はしたくねぇ。大人しく着いて来い」
私の炎猫獣が狙い。そうか、確かに炎を操れる個性を持っていればこの個性は欲しいだろう。それなら、今はここは逃げるが勝ちか。
男に視線を当てたまま、私は思いっきり地面を蹴り上げ空へ駆け上がった。
「そんな簡単に逃すわけねぇだろ」
駆け出した先一面に真っ青な炎が広がり、行手を阻まれた。こうなってしまえば仕方がないと近接線へ切り替える。
ここへ来てから頑丈な岩相手に切り掛かかり続けた。何とかしないと
『っぁあああっ!!!!』
顔面を切り裂いてやろうと上半身に意識を向けすぎた。右足首を掴まれ力任せに反対方向へ折られた。
突然の激痛で体が硬直し、自身の不甲斐なさで涙が溢れた。
その瞬間、男から発せられた炎によって私は意識を手放した。