第9章 『 小さな葛藤 』
二振の太刀が同時に構えられる。
前任の怨念が苛立ちを滲ませた。
「……邪魔を、するな!!」
怨念が、牙を剥く。
黒い霊力が鶴丸へ襲いかかる。
「おっと!」
鶴丸さんは、紙一重で躱し刀を振るう。
「主に手ぇ出すなら、相手は俺だ!」
斬撃が、闇を裂く。
だが完全には届かない。
「厄介だな……この怨念、本丸と繋がってやがる」
三日月が、静かに前へ出る。
「ならば――斬るべきは“核”よ」
その視線が闇の中心――審神者を呑み込んでいる渦を捉えた。
「……主」
鶴丸が、歯を食いしばる。
闇の中で小さく見えた。
陸奥守さんの手を離さずにいる主の姿。
(……ああ、くそ)
胸の奥に封じたはずの感情が、一気に溢れ出す。
(邪魔しない、なんて……言ってる場合じゃねぇだろ)
鶴丸は、一歩、前へ。
「返すぞ」
低く、はっきりと言った。
「その刀も、この主も」
二振の刃が同時に光った。
助けるための戦いが、今始まった。
――主は、まだ、闇の中だ。
だが。
決して一人じゃない。