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【刀剣乱舞】満ち欠けに、鶴。

第9章 『 小さな葛藤 』


――暗い。

闇の中で審神者は足元の感覚を失っていた。
落ちているのか沈んでいるのかもわからない。

ただ胸の奥がひどく痛む。

「……?」

ふと、光が差した。

闇がゆっくりと“映像”に変わっていく。

そこにいたのは――少女だった。
笑っている。

屈託のない、どこにでもいる普通の女の子。
刀剣男士たちに囲まれ失敗しては笑われ、それでも笑い返して。

「……前任の」

声にならない声が喉を震わせる。

彼女は最初から狂ってなどいなかった。

ただ、審神者だっただけだ。
戦を重ね折れる刀が増え、政府の通達が冷たくなり。

「……どうして?」

少女の表情が少しずつ変わっていく。
助けを求めても誰も手を差し伸べなかった。

折れた刀を抱き泣き崩れる夜。

「……やめて」

映像は容赦なく続く。
責任。
失敗。
審神者としての資格。

その言葉に少女は削られていった。

やがて。
――何かが、切れた。
目から光が消え、笑顔が歪む。

「……みんな、私のもの」

少女は、そう呟いていた。
守りたかったものを支配することでしか繋ぎ止められなくなってしまった。

「……やめて」

審神者の胸が締め付けられる。

(わかる……)

孤独も、恐怖も、置いていかれる不安も。

(私も……、一歩間違えたら)

気づけば、闇が濃くなっていた。
前任の感情が波のように押し寄せる。

――怒り。
――悲しみ。
――執着。

(……だめ)

心が、引きずられていく。
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