第2章 『 後任審神者 』
顔を上げても、空気は変わらない。
視線は相変わらず鋭い。
(私が女だから?
それとも……新人審神者への洗礼的な…?)
なかなかどうして。
こんな美しい顔立ちの面々に、威嚇される日が来るとは思わなかった。
「では」
唐突に、政府の人が口を開いた。
「私は、ここで失礼いたします」
――え?
(帰るの、早くないですか??)
内心の叫びをよそに、政府の人は一礼すると、「では」とだけ言い残し、来た道を引き返していく。
あっという間に、姿は見えなくなった。
……取り残された。
殺気立った刀剣男士たちと、新米審神者、ただ一人。
静まり返った大広間で、私はひとつ、息を呑んだ。
政府の人の足音が、完全に遠ざかった。
襖の向こうが静まり返ると同時に、大広間の空気がさらに重くなる。
誰も口を開かない。
けれど、視線だけが、確かに私を射抜いていた。
沈黙に耐えきれず、喉が鳴る。
――そのとき。
「……本当に、この方が次の主で?」
低く、落ち着いた声だった。
声の主を見る。
畳に座る一振りの刀剣男士。
穏やかな顔立ちをしているはずなのに、その瞳だけが、やけに冷たい。
「前任様の引き継ぎもなく、しかも――」
言葉が、そこで一度切られる。
「霊力も、まだ不安定だ」
ざわ、と空気が揺れた。
(不安定……って、今ここで言う?)
思わず心の中で突っ込む。
「そんな主に、我らを預けろと?」
静かな声なのに、刃のように鋭い。
否定でも、怒号でもない。
それが逆に、怖かった。
「失礼だぞ」
斜め前に座る近侍が、低く言う。
「事実を述べているだけだ」
淡々と返され、近侍は一瞬、言葉を詰まらせた。
その沈黙を、別の声が引き継ぐ。
「前任様の気配は、もう薄い」
別の一振り。
どこか達観したような、静かな声音。