第8章 『 距離 』
一方、その頃。
主は、裏庭で一人、立っていた。
「……」
そこへ。
「……何を悩んでいる」
低い声。
振り返ると、大倶利伽羅が腕を組んで立っていた。
「……いえ、何でもありません」
「嘘だな」
即答されるとは……。
主は、苦笑する。
「……ちょっとだけ。距離感って、難しいなと」
「……」
大倶利伽羅は、少し考えてから言った。
「馴れ合うつもりはない」
視線を逸らしながら。
「……だが距離を取られた時楽になるとは限らない……奴もいる」
「……楽になるとは限らない」
「話しかけるな、という意味でないが近づくな、とも限らない」
思わず彼の姿を凝視める。
「……伝えない限り、相手には分からない」
それだけ言うと、踵を返した。
主は、その言葉を胸の中で反芻する。
(……伝えない限り)
(分からない、か)
同じ頃。
鶴丸もまた、同じ言葉に辿り着きそうになっていた。
すれ違いは、まだ終わっていない。
でも。
終わらせる準備は、もう始まっている。