第7章 『 ここから 』
その日の午後。
本丸の通信室。
こんのすけを通じて、政府との正式な回線が開かれた。
「――報告を確認しました」
機械越しの、無機質な声。
「折損刀剣、全二十一振の完全修復」
「前例は、存在しません」
一拍置く。
そして。
「……確認を取りますがこれは、演算上の誤差ではありませんね?」
何故か凄く疑われてしまった。
「ありません」
主は、はっきり答えた。
「全て、この本丸で起きた事実です」
回線の向こうで、複数の気配がざわつく。
「審神者様」
声の質が、変わった。
「貴方の霊力特性は、“刀剣維持”ではなく“刀剣保護・修復”に近い。政府の想定を、完全に逸脱しています」
(……やっぱり)
胃が、きゅっと縮む。
「よって査察レベルを、引き上げます」
そう言われることは予想していた。
問題なのはその後。
「監視対象として、当面、注視します」
“保護”ではない。
“管理”でもない。
――監視。
主は、苦笑した。
「……想定外、ですよね」
その一言に、回線の向こうが、わずかに詰まる。
「……はい」
「極めて」
こんのすけが、気まずそうに尻尾を揺らした。
「ただし」
声が、続く。
は
「現時点では、
本丸の解体・主の交代は行いません」
「理由は一つ」
「――成果が、
否定できないからです」
回線が切れる。
部屋に残った静寂。
「……胃が痛い」
主は、ぽつりと呟いた。
その背後で。
「それでも」
「主は、主だ」
三日月の声が、静かに響いた。
「政府がどう扱おうと、
俺たちは、貴方の刀だ」
その言葉に。
主は、少しだけ、笑った。