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【刀剣乱舞】満ち欠けに、鶴。

第7章 『 ここから 』


朝食のざわめきが落ち着いたあと。

刀剣男士たちがそれぞれの持ち場へ戻り始め、
大広間に残る気配がまばらになった頃。

「……主」

低く、よく通る声。

振り返ると、縁側に近い位置に、三日月宗近が立っていた。
月を映したような瞳。

穏やかな笑み。

――けれど。
その距離は、まだ遠い。

「今まで、俺は貴方を信用していなかった」

前置きもなく、そう言った。
周囲の空気が、わずかに張り詰める。

「奇跡を起こす者は、往々にして、代償を払う。そして政府は、代償を払わせる側だ」

静かな声。
責めるでもなく、庇うでもない。

「だから俺は、貴方が“使い捨てられる審神者”だと思っていた」

正直すぎる言葉。
主は、驚くほど落ち着いていた。

「……そう思われても、仕方ないと思います。何も知らされず、何も分からないまま、来ましたから」

三日月の眉が、ほんのわずかに動く。

「だが」

一歩、近づく。

「折れた刀に、手を伸ばした」
「命として扱った」
「それは、政府の理から外れている」

三日月は、主の前で足を止めた。

「だから、聞こう」
「――貴方は、政府のために、この本丸を守るのか」

それとも。
言外の問い。

主は、一度、息を吸ってから答えた。

「私は刀を、守ります」

しっかりと三日月の目を見て言った。

「守りたい、ただそれだけです」

短い言葉。
けれど、迷いはなかった。

三日月は、しばらく主を見つめ――ふっと、笑った。

「……なるほど」
「ようやく、俺が仕える“主”の顔を見た気がする」

その場で、膝を折る。
深く、頭を下げる。

「三日月宗近。遅ればせながら、貴方の刀だ」

主は、慌てて手を振った。

「ちょ、ちょっと待ってください!きゅ、急にそんな……!」
「ははは。驚かせるのも、俺の性分でな」

初めて目にしたその笑みは、本当に楽しそうに見えた。
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