第6章 『 誓い 』
身体の奥に残っていた重さが、ようやく引いた朝だった。
目を覚ました瞬間、畳の匂いと、柔らかな光。
(……生きてる)
それが、最初に浮かんだ感想だった。
「主」
すぐ傍で、聞き慣れた声。
へし切長谷部が、いつものように控えていたが――
その表情は、どこか安堵が混じっている。
「体調はいかがですか」
「……大丈夫、みたい」
声が出ることを確認して、少しだけ笑う。
「三日、眠っておられました。医療班の見立てでは、朝食から問題ないとのことです」
「朝食……」
その言葉に、ふと、胸がざわついた。
(大広間……)
最初にこの本丸で向かった場所。
殺気と視線に晒され、胃が痛くなった場所。
「……行こうか」
「はい。皆、待っております」
襖の前。
手をかけた瞬間、中から、はっきりと気配が伝わってきた。
――多い。
報告通り。
いや、それ以上に。
「……失礼します」
襖を開けた、その瞬間。
「おはようございます、主!!」
一斉に響いた声。
どよめき。
笑顔。
そして、祝うような空気。
「……え?」
思わず、足が止まった。
そこには。
刀剣男士、全振。
欠けることなく、折れることなく、“揃って”いたからだ。
「主!」
「体調はもういいのか?」
「無理はするなよ!」
「生きててくれて何よりだ」
次々と投げかけられる声に、頭が追いつかない。
(……あれ?こんな、感じじゃ……)
最初に来た時とは、まるで違う。
威圧も、疑念も、殺気もない。
ただ――迎え入れる空気。
「……おはようございます」
一拍遅れて、そう言うと。
自然と、頭を下げていた。
「改めまして」
背筋を伸ばし、皆の顔を見る。
「この本丸の審神者です。まだ至らないことも多いですが……
これからも、どうぞよろしくお願いします!」
一瞬の静寂に包まれるも。
「当然だ!」
「こちらこそ!」
「主、よろしく頼む」
拍手すら起きそうな勢いで、笑いと声が広がった。