第2章 『 後任審神者 』
「それが消えてしまうと……どうなるんですか」
「この本丸に存在するすべてが、“引き継ぎ失敗”と判断されます。
刀剣男士は、本来の刀としての姿に戻るか――あるいは、そのまま消滅する可能性もございます」
せっかく、ここまで来たのに。
消える……?
「それを防ぐためにも、貴方様のお力が必要となります」
「……何を、すれば」
「この本丸に来ただけでは、“引き継ぎ”とは認められません」
少しだけ言いづらそうに、政府の人は続けた。
「酷な言い方になりますが……正式な作法を踏んでいただく必要がございます」
そう言うと、持っていた紙袋のようなものから、一冊に束ねられた書類を取り出し、私へ差し出した。
「これは……?」
「言葉では伝えきれないため、こちらをご用意しました。
読むことで、引き継ぎの作法が頭の中に直接刻まれる仕組みとなっております」
……便利すぎない?
「必ず、お一人で目を通してください」
「わかりました。ありがとうございます」
私はその束を受け取り、すぐに肩掛けの鞄へしまった。
「では――参りましょうか」
政府の人の後に続き、大きな門をくぐる。
その先で。
「……お待ちしておりました」
凛とした声が響いた。
門の内側に立っていたのは、髪をきっちりとセンターで分けた、高身長の男。
どこか人ならざる気配を纏った――
間違いなく、刀剣男士だとわかる存在だった。