第2章 『 後任審神者 』
政府塔での契約を終えると、休む間もなく移動の準備に入った。
「転送は一瞬です。足元にお気をつけください」
足元に描かれた陣が淡く光り出し、次の瞬間、視界が白に塗りつぶされる。
浮遊感すら感じる暇もなく、ふっと身体が地に戻った。
――気づけば、そこはまったく別の場所だった。
「……ここが?」
案内された先は、筑前国。
昔ながらの日本家屋を思わせる本丸だった。
教科書や資料でしか見たことのないような、瓦屋根と木造の建物。
けれど、どこか“生きている”気配がある。
「はい。こちらが、貴方様が引き継ぐ本丸となります」
あえて、もう一度確認する。
「……ここ、ですか?」
「間違いございません」
門の向こうから、楽しそうな声が聞こえてくる。
子どもがはしゃぐような、明るい笑い声。
戦の拠点だと聞いていた場所からは、少し意外な音だった。
「近侍の方には、すでにお伝えしております。どうか、そう身構えなさらずに」
そう言われても、逆効果だった。
胸の鼓動がやけに大きく、頭がうまく回らない。
胃のあたりが、きり、と痛む。
私はそっとお腹をさすり、深呼吸を繰り返して自分を落ち着かせた。
――そのとき。
「審神者様。もう一つ、お伝えしなければならないことがございます」
声の調子が変わった。
さっきまでの事務的な空気とは、明らかに違う。
「……まだ、何かあるんですか」
「はい。非常に重要なことです」
一拍置いて、告げられる。
「早くて一週間。遅くとも、二、三週間以内になります」
「……何が?」
「前任審神者様の力が、完全に消滅する期限です」
――いや、ここでそんな重い話する?
内心で思わず叫んだ。