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【刀剣乱舞】満ち欠けに、鶴。

第2章 『 後任審神者 』


涙を拭う間も与えられないまま、話は次の段階へと進んだ。

「――以上が、説明となります」

その一言で、部屋の空気が変わる。

誰かが机の上に、一枚の書類を置いた。

白い紙。
けれど、そこから微かに感じる霊気に、思わず息を詰める。

「こちらが、時の政府と審神者との正式な契約書です」

契約。
その言葉に、胸の奥がきゅっと縮まった。

内容は簡潔だった。

歴史修正主義者と戦うこと。
刀剣男士を率い、本丸を管理すること。
そして、審神者としての責務を果たせなくなった場合、政府の裁定に従うこと。

導きも、庇護もある。
同時に、罰もまた存在する。

「拒否する権利はあります」

そう前置きした上で、政府の一人が続ける。

「ですが、その場合――本丸は完全に解体され、顕現している刀剣男士は、全て霊体へと還されます」

淡々とした声だった。
脅しではない。

事実を告げているだけだ。

私は、書類から目を離せずにいた。
まだ顔も知らない刀剣男士たち。
それでも、この先で出会うかもしれない存在。
私が断れば、その可能性ごと消えてしまう。
逃げることは、簡単だった。
ここに来るまで、そうして生きてきたのだから。
それでも――。

「……契約します」

自分でも驚くほど、声ははっきりと出た。
政府の者が、静かに頷く。

「では、血判を」

差し出された小刀は、儀式用のものだという。
刃先に宿る冷たい光に、一瞬だけ躊躇して、それから指先を切った。

紙に落ちた血が、じわりと文様を描き出す。
墨で書かれたはずの文字が、赤く光り、脈打つように動いた。

その瞬間。

「――契約、成立」

低く告げられた声と同時に、空気が震えた。

胸の奥が、熱い。
何かが、確かに私の中に根を張った感覚。

もう後戻りはできない。

こうして私は――
時の政府公認の、審神者となった。
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