第5章 『 私の力 』
訓練場の静けさは、思ったより長く続いた。
風もない。
音もない。
それなのに。
「……来てるな」
鶴丸が、ぽつりと言った。
目を開けると、訓練場の入り口に、人影が。
近侍でも、呼び出しでもない。
ただ、立っている。
「……あ」
豊前江眼鏡をかけたアンニュイ顔のイケメンが。
腕を組み、こちらを見ている。
けれど、近づいてこない。
「なんですの?」
気まずそうに、視線を逸らす。
「呼ばれた気ぃしまして…」
……呼んでない。
私は、何もしていない。
と思ったのに。
次に現れたのは、縁側の向こう。
大包平だ。
立ったまま、訓練場を見下ろしている。
「……妙だな」
低く、短く。
「ここ、落ち着く」
それだけ言って、動かない。
その後だった。
ぱたぱたと足音。
「おやおや」
まだ名前も知らない方々がその刀を気にかけて集まる。
粟田口の脇差が一人。
誰も、声を荒げない。
誰も、近づきすぎない。
ただ、“ここに居たい”という距離で、自然に、円を描く。
「……これ」
鶴丸が、小さく息を吸う。
「完全に、“呼応”してる」
私は、慌てて立ち上がりそうになって――
思いとどまった。
(三日月の言葉……)
“何もしない”。