第5章 『 私の力 』
私は、座ったままただ呼吸を整えた。
その瞬間。
場の空気が、さらに、柔らいだ。
「……主」
小さな声。
誰かと思えば、長髪の男の子だった。
「ここ、暖かいですね」
それを聞いた瞬間。
「……っ」
大包平が、一歩、踏み出しかけて、止まる。
「……鶯丸も」
声が、震えた。
「ここに居れば……」
言葉を、飲み込む。
鶴丸は、笑わなかった。
珍しく、真剣な顔で、私を見る。
「主」
「これ……訓練じゃない」
「本丸が、主を“中心”として、勝手に整い始めてる」
私は、喉を鳴らした。
「……まずい、ですか」
「政府目線なら」
「……やっぱり」
「最悪」
それから、少しだけ声を落とす。
「でも」
「刀剣男士目線なら――」
周囲を見渡す。
静かに集まった、仲間たち。
「奇跡だ」
その時。
回廊の奥。
月の光が、一段、濃くなった。
三日月宗近が、そこにいた。
近づかない。
けれど。
「……なるほど」
誰にともなく。
「主が“座す”だけで、刀が集う、か」
初めて。
その目が、否定ではなく――“警戒”から、“理解”へと、揺れた。
「……これは」
小さく、微笑む。
「信じぬ方が、難しいな」
誰にも聞こえぬ声。
だが。
確かに。
この本丸は、
“主を主として”認め始めていた。