第5章 『 私の力 』
訓練場。
朝の空気は澄んでいるはずなのに、私の呼吸だけが、やけに重かった。
「集中してください、主」
長谷部の声。
「はい…」
深呼吸。
霊力を、集める。
(守るだけでいい)
(刀に、触れなくてもいい)
そう思った瞬間。
――ぐらり。
視界が、歪んだ。
「……っ」
霊力が、散る。
結界の端が、情けないほど、かすれる。
「……失敗、ですね」
「……はい」
何度目だろう。
集めようとすれば、流れすぎる。
抑えようとすれば、自分が削れる。
制御できない。
「今日は、ここまでに」
長谷部さんの声は、これ以上続けさせない調子だった。
私は、黙って頷きその場を後にした。
夕食を終えて皆ぞろぞろと部屋に戻る。
誰も通らない廊下の片隅。
私は、膝を抱えて静かに座っていた。
(向いてないのかな)
(守る力、なのに)
苦手意識だけが、じわじわと、広がる。
その様子を――
少し離れた場所から、誰かが見ていた。
言葉は、かけない。
ただ、視線だけが、静かに留まる。
そんな時こんのすけが、再び目の前に現れた。