第2章 『 後任審神者 』
事情の説明など一切ないまま、私は言われるがままに連れて来られた。
政府塔――時の政府が管理する、天を衝くほどの巨大な塔。その中の一室で、私は長い時間を過ごしていた。
円を描くように並ぶ椅子。そこに腰掛ける「政府」と名乗る者たち。そして、その中心に置かれた私。
ここは、審神者を導き、支え、時には裁く場所。
淡々と、感情を削ぎ落とした声で、彼らは語る。
時の政府の役割。
歴史を守るという使命。
審神者という存在。
付喪神――刀剣男士について。
ひとつひとつは知識の説明にすぎないはずなのに、その言葉には妙な重みがあった。
まるで逃げ場を塞ぐように、静かに、確実に。
そして、話題は私自身へと移る。
私の家系は霊力が強く、かつて審神者を輩出していたこと。
二代にわたり主を失った本丸が、いまも眠り続けていること。
そして――血縁の中で、唯一その適性を持つのが私であること。
「あなたに、本丸を継いでいただきたい」
告げられたその言葉に、思考が追いつかなかった。
自分の先祖に、審神者がいた。
ただそれだけの事実で、頭の中が真っ白になる。
私はこれまで、親と呼べる人たちはすでに亡くなっているとだけ教えられて生きてきた。
死因も、経緯も、何ひとつ知らされないまま。
身内だという大人たちに預けられ、転々としながら――
「駆け落ちしてできた子だ」
そう言われ、蔑まれ、
親のことも、その家のことも、語られることはなかった。
――それが、ようやく繋がった。
初めて聞かされる、親の血筋の話。
初めて知る、自分が“選ばれた理由”。
それだけのことなのに。
気づけば私は、声も立てず、ただ静かに涙を流していた。
時の政府の冷たい部屋の中で、それでも確かに、胸の奥が熱くなるのを感じながら。