第5章 『 私の力 』
夜。
三条派の部屋。
本丸の灯りが落ち、人の気配が薄れる刻。
三日月宗近は、三条派の奥座敷に一振で立っていた。
そこにあるのは――
かつて名を持ち、今は眠り続ける刀。
布に包まれ、静かに、存在だけを残している。
「……相変わらず、静かだな」
誰にともなく。
三日月は、刀の前に腰を下ろした。
「新しいあの女は……随分と、無茶をする」
微笑みは、いつものもの。
だが、声は低い。
「刀を“使わぬ”霊力」
「守るために、自分を削る力か」
月明かりが、刀身の影をなぞる。
「……もし、それが本当なら」
三日月は、目を伏せる。
「また、同じ結末を見ることになるやもしれぬ」
過去。
失われた主。
折れた仲間。
「信じるには……俺は、長く生きすぎた」
そう呟き、そっと立ち上がる。
その背後で――わずかに、空気が揺れた。