第5章 『 私の力 』
日が傾ききる頃。
本丸の結界が、わずかに震えた。
「……来る」
長谷部の低い声とほぼ同時に、空間が裂けるような感覚が走る。
次の瞬間――
大広間の中央に、複数の気配が現れた。
統一された装束。
余計な装飾のない、政府直轄部隊の正装。
その先頭に立つ一振が、静かに前へ出る。
「政府査察部隊所属」
淡々とした声。
「刀剣男士・山鳥毛だ」
ざわ、と空気が動いた。
長身で、整った顔立ち。
だがその瞳には、情がない。
「規定に基づき、本丸の査察を開始する」
視線が、一直線に私へ向けられる。
「――貴方が、新任審神者か」
「……はい」
「感情的な返答は不要だ」
即座に遮られる。
「我々は“結果”のみを見る」
その言葉に、鶴丸が小さく鼻で笑った。
「随分と、冷たいお出ましだ」
「冗談は不要だ、鶴丸国永」
名を、正確に呼ばれる。
「……前任審神者の件で、この本丸は“要注意指定”を受けている」
場の温度が、一段下がる。
「前任は――霊力を私物化し、刀剣男士を“消耗品”として扱った」
その一言で、折れた刀たちの存在が、暗に示された。
「……女性だった、んですよね」
私が、静かに言う。
山鳥毛は、少しだけ視線を細めた。
「そうだ」
「記録名は?」
「――現時点では、秘匿事項だ」
即答だった。
「ただし」
一拍置いて、続ける。
「彼女は、“審神者の血統”を名乗っていた」
心臓が、嫌な音を立てる。
「血縁は?」
「確認されていない」
はっきりと。
「むしろ、“意図的に他者の戸籍と紐づけていた”可能性が高い」
……なすりつけ。
完全に。
「では、私が――」
言いかけた瞬間。
空気が、波打った。