第5章 『 私の力 』
こんのすけは、ゆっくりとこちらを見た。
そして――
「……申し上げにくいのですが」
低く、事務的な声。
「記録上、前任の審神者は“女性”でございます」
……え?
「え……?」
思考が、止まる。
「登録名義は、貴方様の父親ではありません」
淡々と、追い打ちをかける。
「血縁関係も、確認されておりません」
耳鳴りがした。
「……じゃあ」
声が、うまく出ない。
「私が、ずっと聞かされてきた話は……」
「虚偽、もしくは」
こんのすけは、言葉を濁した。
「“意図的に歪められた情報”かと」
膝から、力が抜けそうになる。
(……父じゃ、なかった)
(じゃあ、私は……)
「……女の、審神者」
ぽつりと呟く。
「……前任は」
こんのすけは、視線を逸らした。
「詳細は、査察時に正式開示となります」
逃げ道のない言葉。
「ただ、一つだけ」
こんのすけは、はっきりと言った。
「その前任審神者は、
規定違反により――“問題個体”として、記録されています」
空気が、凍る。
長谷部の拳が、音を立てて握られた。
「……つまり」
鶴丸が、低く言う。
「主は、“罪をなすりつけられた”ってわけだ」
私は、唇を噛みしめた。
(……親だと、思ってた人)
(……違った)
それでも。
顔を上げる。
「ありがとうございます。査察、受けます」
声は、震えていなかった。
「逃げません」
こんのすけは、少しだけ目を見開いた。
「……承知いたしました」
深く、頭を下げる。
「派遣部隊は、明日、日没前に到着予定です」
それを聞いて。
私は、静かに息を吸った。
(……本番は、ここから)
過去も。
本丸も。
私自身も。
――すべて、試される。