第5章 『 私の力 』
奥の間に残っていた余韻は、まだ消えきっていなかった。
折れた刀の前。
誰もが言葉を探しあぐねていた、そのとき――
「こーんっ!」
場違いなほど、明るい声が響いた。
「……?」
反射的に振り返る。
いつの間にか、部屋の中央に、白い狐――こんのすけが現れていた。
「政府所属、時の政府連絡役・こんのすけでございます!」
軽やかに頭を下げる。
だが、その目は、笑っていなかった。
「本丸にて発生した霊力の異常反応――正式に、政府が検知いたしました」
空気が、張り詰める。
「……やはり、来たか」
鶴丸が、小さく呟く。
こんのすけは、淡々と続けた。
「規定に基づき、本丸への査察を実施いたします」
「査察……」
「ええ」
尻尾を揺らしながらも、声は冷静だった。
「部隊を派遣し、本丸の状態、霊力の安定性、審神者様の適性を確認いたします」
「……偵察、ということですか」
私が問うと、こんのすけは一瞬だけ言葉を選んだ。
「はい。“現時点では”偵察、でございます」
その言い方が、ひどく引っかかった。
「主」
長谷部が、私の一歩前に立つ。
「必要な対応は、こちらで整えます」
「ありがとうございます」
そう返しながらも胸の奥がざわついていた。
(政府が来る)
(この本丸を、見る)
(……折れた刀も)
「……あの」
ふと、疑問が口を突いて出た。
「前任の審神者について、
政府は、どこまで把握しているんですか」
こんのすけの動きが、一瞬止まる。
「……なぜ、そのようなことを?」
「私」
言葉を探す。
「ずっと、聞かされてきました」
「この本丸の前任は、……私の父だと」
隣にいた長谷部さんも後ろに居る2人の口から同時に「え?」と声が聞こえた。