第4章 『 主として 』
「……久しぶりに、腹の底が温かくなったと思ったら」
目を細め、私を見る。
「新しい主、か」
視線が、まっすぐ刺さる。
「……主です」
名乗ると、豊前は鼻で笑った。
「正直に言う」
遠慮のない声。
「優しいだけの主なら、この本丸じゃ、もたねぇ」
胸が、きゅっとなる。
「さっきの霊力」
畳に手をつく。
「意図してやったもんじゃねぇだろ」
「……はい」
正直に答える。
「だろうな」
豊前は、ふっと息を吐く。
「だがな」
目が、鋭くなる。
「無自覚で、ここまで広げられる主も、そうはいねぇちゃ」
「それは」
「折れた刀を見て」
豊前は、視線を奥へ向ける。
「逃げなかった」
「鶴丸に触れて」
「力を、押し付けなかった」
一つずつ、確認するように言う。
「……覚悟は、あるってことでいいんだな」
問い。
試し。
私は、ゆっくりと頷いた。
「ちゃんとあるよ」
豊前は、しばらく私を見ていた。
それから、苦笑する。
「……面倒な主だな」
「それ、褒めてるのか?」
鶴丸が口を挟む。
「半分な」
豊前は、視線を戻す。
「残りの半分は……」
じっと私の顔を見つめる豊前江。
「期待、だな」
外のざわめきが、次第に大きくなっていく。
本丸が、目を覚まし始めていた。
私は、胸の奥で静かに思った。
(……ここから、なんだ)
この本丸は。