第4章 『 主として 』
鶴丸の胸元――
白い衣の下、刀剣男士としての“核(心臓)”がある場所。
「……触りますね」
了承も待たず、指先で、撫でるように触れた。
びくり、と鶴丸の身体が震える。
「……っ」
驚いた声。
「……これ、初めてです」
自分でも、少し驚くほど落ち着いていた。
「刀を、撫でるの」
指先から、じんわりと温かさが広がる。
霊力だと、わかった。
意図していない。
けれど、拒まれていない。
「……折れないように、折れないように、じゃなくて」
そっと触れるように撫でる。
大切なものに触れるように優しく。
「折れたら、終わりじゃない。ここに居る鶴丸国永は貴方だけです。それを……ちゃんと、覚えていて欲しい」
鶴丸は、しばらく固まっていた。
それから――
「……はは」
いつもの、少し大きめの笑い。
「参ったな」
視線を逸らし、照れ隠しのように言う。
「そんな撫で方されたら、試した俺の方が悪者みたいじゃないか」
でも。
その目は、はっきりと揺れていた。
「……主」
低い声。
「それ、覚悟ってやつだぜ」
私は、手を止めなかった。
「はい」
静かに、答える。
「だから、逃げません」
鶴丸は、ふっと息を吐き。
「……驚いた」
ぽつりと。
「本当に、驚いた」
そして、小さく笑った。
「こりゃあ、この本丸……面白くなりそうだ」
その言葉は、冗談みたいで。
でも――
確かに、希望の音がした。