第4章 『 主として 』
「……それでも?」
問いかけ。
試す声。
「それでも、主は――ここに、いられるか?」
胸の奥で、何かが鳴った。
怖くないわけがない。
現実は、重くて、残酷で。
でも。
「……正直に言いますね」
私は、ゆっくりと答えた。
「怖かったです」
鶴丸の眉が、わずかに動く。
「逃げたいって、思いました」
息を空いて吐き出す。
「でも」
布団の上の鶴丸を見る。
「折れた刀を見て、“いなかったこと”にする方が……もっと怖かった」
言葉が、自然に出てくる。
「私が見た以上、もう、知らなかったとは言えないから」
鶴丸は、黙って聞いていた。
「……そうか」
小さく、息を吐く。
「じゃあさ」
少しだけ、声が低くなる。
「俺がまた折れるかもしれないって言っても?」
心臓が、強く打つ。
「それでも、主でいられるか?」
一瞬、迷った。
それから。
私は、そっと、手を伸ばした。