第4章 『 主として 』
かすかに、衣擦れの音がした。
「……?」
反射的に顔を上げる。
布団の上。
眠っていたはずの白い刀剣男士が、ゆっくりと身じろぎした。
「……あー……」
間の抜けた声。
「……ここ、まだ現世だよな?」
「……鶴丸、国永?」
長谷部が息を呑む気配がした。
鶴丸国永は、ゆっくりと上体を起こす。
蒼い瞳が、ふらりと揺れて――こちらを捉えた。
一瞬。
何かを確かめるような、鋭さ。
それから。
「……はは」
軽い笑いをこぼす。
「いやあ、こりゃ驚いた。
目ェ覚ましたら、新しい主が泣きそうな顔で立ってるとはな」
私は、思わず布団の脇に膝をついた。
「……鶴丸さん」
私の声が、震える。
「私――」
言葉を選ぶ前に、口が動いた。
「貴方を、救いに来ました」
静寂。
その言葉が、空気に落ちる。
鶴丸は、一瞬だけ目を見開いた。
そして、わざとらしく肩をすくめる。
「おいおい、物騒だなあ。
俺は別に、助けてくれなんて言ってないぜ?」
そう言って、にやりと笑う。
「それにさ」
視線を逸らし、軽い調子で続ける。
「俺みたいな厄介者に近づくと、主まで痛い目見るかもしれないぞ?」
冗談めかした声音。
けれど。
(……遠回りしてる)
「だから」
鶴丸は、わざと軽く言った。
「近づくな」
一瞬、胸が痛んだ。
それでも。
私は、立ち上がらなかった。