第4章 『 主として 』
でも、もう、迷わなかった。
「この本丸を」
息を吸い、吐く。
「立て直します」
長谷部が、わずかに目を見開いた。
「前任が壊したもの全部を、なかったことにはできない」
折れた刀を、見下ろす。
「それでも」
視線を上げる。
「これ以上被害者を、増やさせるつもりはありません」
声は、小さくても、揺れなかった。
「刀を“道具”として使う本丸には、しない」
長谷部は、ゆっくりと立ち上がる。
そして――膝を折った。
深く、深く。
「……そのお言葉」
畳に額がつくほどの、礼。
「へし切長谷部、確かに承りました」
胸が、きゅっとなる。
「主」
顔を上げ、真剣な目でこちらを見る。
「この本丸は、立て直しなどという生易しいものではありません」
「わかってます」
即答する。
「それでも」
一歩、前へ。
「私が、この本丸の主です」
折れた刀たちの間を、風が通り抜けた気がした。
「……では」
長谷部は、静かに言った。
「これより先は、“覚悟ある主”として、お仕えいたしますね」
私は、頷づく。
怖くないわけじゃない。
何もかも、わからない。
それでも。
「私一人では不安なので、お手伝いをお願いしてもいいですか?」
そう言うと、長谷部は、ほんのわずかに――
誇らしげに、微笑んだ。