第4章 『 主として 』
折れた刀の前で、どれほどの時間を過ごしていたのだろう。
長谷部さんの声で我に返る。
「…主」
「…あ、はい」
口から出た声は、かすれていた。
「政府は」
自分でも驚くほど、落ち着いた声が出た。
「政府は、この刀たちのことを……知っているんですか」
長谷部は、即答しなかった。
その沈黙だけで、答えは半分わかった気がした。
「……報告は、上がっています」
やがて、そう言った。
「ですが」
続く言葉が、重い。
「“詳細までは”把握していないでしょう」
「……どういう、意味ですか」
「折れた、という事実のみです」
長谷部は、視線を刀へ向ける。
「どのような経緯で、どのような扱いを受け、
どのような思いで折れたのか――」
私は息を飲む。
「そこまでは、記録されていません」
(……数字だけ)
頭の中で、言葉が形になる。
「……刀の数が合わなかった理由」
私は、静かに言った。
「“戦力の減少”として、処理されているだけなんですね」
「……はい」
胸が、きしむ。
「それって……刀たちが、いなかったことにされているのと、同じですよね」
長谷部は、何も言わなかった。
それが、答えだった。
私は、立ち上がる。
足は、まだ少し震えていたけれど。
折れた刀たちの前に、きちんと立つ。
「……私」
言葉を探す。