第4章 『 主として 』
(……十一)
報告にあった数。
大広間にいた数。
眠る二振。
――合わない理由。
(……減って、いったんだ)
「……こんな」
喉が、ひどく渇く。
「……こんなこと、あっていいんですか」
震える声で、そう絞り出した。
長谷部は、しばらく黙っていた。
やがて、静かに口を開く。
「前任様は……刀を“道具”としてしか見ておりませんでした」
冷たい言葉。
「折れれば、また新しい刀を鍛えればよい。そう、お考えだった」
拳を、無意識に握りしめる。
「……主」
長谷部は、初めて感情を滲ませた声で言った。
「これは、この本丸に残された“前任の負の遺産”です」
沈黙。
畳の匂い。
冷えた空気。
折れた刀たちの、言葉なき存在。
私は、膝に力が入らなくなり、その場に座り込んだ。
「……」
涙は、出なかった。
ただ、何も言えなかった。
「主」
長谷部が、そっと隣に膝をつく。
「この本丸は……一度、壊れています」
胸の奥に、重いものが落ちる。
「ですが」
長谷部は、私を見た。
「修復できぬとは、誰も言っておりません」
その言葉に、ようやく呼吸が戻る。
(……逃げられない)
でも。
(……逃げたく、ない)
折れた十一振の刀を前に、私は、静かに目を閉じた。
そして――
初めて、審神者として、心から誓った。