第4章 『 主として 』
建物の中は、ひどく静かだった。
障子を開けると、ひやりとした空気が肌に触れる。
長く人の出入りがなかった場所特有の、澱んだ気配。
「……」
畳の上。
二振の刀剣男士が、眠るように横たわっていた。
「……あ」
思わず、声が漏れる。
白い装束に身を包んだ男。
その隣で、少し砕けた姿勢のまま眠る男。
「鶴丸国永と、豊前江です」
長谷部が、静かに名を告げた。
「二振とも、重傷を負ったまま目覚めず……
霊力の供給が追いつかず、こうして休眠状態にあります」
(休眠って……)
言葉を噛み砕く暇もない。
「主」
長谷部は、部屋のさらに奥を示した。
「……本当の理由は、こちらです」
促されるまま、一歩踏み出す。
その瞬間――
胸が、ぎゅっと締め付けられた。
奥の間。
そこには、刀剣男士の姿はなかった。
代わりにあったのは。
「……刀」
台の上に、整然と並べられた――折れた刀。
一、二、三……
数えきれない。
「……十一、ですか」
自分の声が、ひどく遠く聞こえた。
「はい」
長谷部は、視線を伏せたまま答える。
「前任の審神者によって……戦場で、無理な出陣を命じられ」
淡々と、事実だけを語る声。
「折れた刀です」
言葉が、出てこない。