第3章 『 よろしくお願いします。 』
「なるほど」
視線を長谷部へ向ける。
「近侍殿が、肩を持つわけだ」
長谷部は、即座に応じない。
ただ、静かに主の隣に立つ。
「……覚悟はある、か」
男はそう呟き、箸を取った。
「ひとまずは、様子見としよう」
大広間の空気が、少しだけ緩む。
私は、ゆっくりと息を吐いた。
(……朝ごはん、味しなくなりそう)
けれど。
誰も、私を無視なんてしなかった。
それだけで昨日よりも少しだけ前に進めた気がした。
朝食がひと段落し膳が下げられていく。
大広間の空気は、先ほどよりも幾分和らいでいた。
刀剣男士たちは各々言葉少なに立ち上がり、持ち場へ戻っていく。
その背中を、私はぼんやりと目で追って――
ふと、違和感を覚えた。
(……あれ)
胸の奥が、ちくりとする。
数。
「……長谷部さん」
小さく、隣に立つ近侍の名を呼ぶ。
「はい、主」
「昨日、政府の方から聞いた……この本丸に在籍している刀剣男士の数って、何振りでしたっけ?」
長谷部は即答した。
「六十振りです」
……やっぱり。
今、大広間にいたのは――
「……なんだか、その数よりも圧倒的に少なくないですか??」
長谷部の表情が、わずかに強張る。
「……お気づきになりましたか」
その一言で、確信した。
「私の気のせい、じゃないんですね」
「ええ」
長谷部は、ほんの一瞬、視線を伏せてから言った。
「現在、本丸には大広間に姿を見せていない刀剣男士が、数振りおります」
「……どうして?」
問いかける声が、自然と低くなる。
「理由は、それぞれです」
含みのある言い方。
「主」
長谷部は、こちらをまっすぐに見た。
「それでも、確認なさいますか」
(……選択、させてくれるんだ)
少しだけ、考える。
知らないままでいることもできる。
でも。
「お願いします長谷部さん。案内してください」
即答だった。
「この本丸のこと、私はちゃんと知っておきたいんです」
長谷部は、静かに頷いた。
「御意」