第3章 『 よろしくお願いします。 』
……明るい。
薄く目を開けると、障子越しに柔らかな朝の光が差し込んでいた。
「……あれ」
一瞬、ここがどこかわからなくなってしまった。
畳。
低い天井。
知らない部屋。
「……あ」
そうだ。
本丸だ。
昨日のことが、波のように押し寄せてくる。
審神者。
契約。
へし切長谷部。
そして――昨夜の、あの熱。
胸元に手を当てる。
特に変わった様子はない。
「……夢、じゃないよね」
ぽつりと呟いた、そのとき。
「失礼いたします」
障子の向こうから、声。
「主。お目覚めでしょうか」
「あ、はい!」
慌てて返事をすると、障子が静かに開いた。
立っていたのは、へし切長谷部だった。
昨夜と変わらぬ姿。
――現実だ。
「朝食の準備が整いました。大広間へ、お越しいただけますか」
「……え、もう?」
正直、何も状況がわかっていない。
「何か、ありましたか?」
問いかけると、長谷部は一瞬だけ言葉を選ぶように視線を伏せた。
「……あ、いえ」
その“間”が、少しだけ気になった。