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【刀剣乱舞】満ち欠けに、鶴。

第3章 『 よろしくお願いします。 』


「…へし切、長谷部?」
「はい」

繰り返し名を呼んだ。
彼は嬉しそうにハニかむ。

「元は黒田の刀。主命とあらば、命すら惜しまぬ身」

顔を上げた長谷部の瞳は、まっすぐこちらを見据えている。
先ほどの大広間で見せた張り詰めた気配とは違う“主に向ける刀”の顔だった。

「前任審神者様の力は、すでに薄れています」

淡々と、しかし誤魔化さずに告げられる。

「ゆえに私は、今この場で――
貴方様と、正式な主従契約を結びたい」

静寂。

「……それは」

私の声は、思ったより落ち着いていた。

「私が、長谷部さんの主になる、ということですか」
「はい」

即答。

「まだ引き継ぎは完全ではありません。
ですが、主が本丸に足を踏み入れ、我らを守る意志を示された今」

長谷部は、深く頭を垂れる。

「私は、貴方様を主と認めます」

胸が、ぎゅっと締めつけられる。

――そんな大事なことを、こんな簡単に決めていいの?
そう思ったのに。

「……お願いします」

気づけば、そう答えていた。

「私には、まだ何もありません。でも――逃げるつもりはないです」

長谷部の目が、わずかに見開かれる。

「消えるかもしれないって言われて」

一度、言葉を選ぶ。

「それでも、放っておけなかった」

小さく、でもはっきり。

「だから……あなたが、それでもいいと言ってくれるなら」
「…主」
「私は知世と言います。今日をもって私が、主になります」
「知世様…ですね」

その瞬間空気が、揺れた。

畳の上に、淡い光が滲む。
長谷部の周囲に、静かな霊気が立ち上る。

「――契約、受諾」

低く、厳かな声。

「我が名、へし切長谷部。
今ここに、貴方様との主従を再び結ぶ」

長谷部の額が、そっと畳につく。
その瞬間、胸の奥が熱を帯びた。

何かが、確かに“繋がった”感覚。

怖さは、消えない。
不安も、まだある。
それでも。

「よろしく、お願いします!」

そう言うと、長谷部は顔を上げ、はっきりと頷いた。

「はい、主」

その一言が、私を“審神者”にした。
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