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【刀剣乱舞】満ち欠けに、鶴。

第10章 『 主と刀である前に 』


喉が詰まる。

「主として? それとも……ただの、都合のいい存在ですか」

涙が止まらないまま、それでも無理やり笑おうとして「……もし、嫌いなら」と一歩、距離を取るように下がり
「ちゃんと突き放してください。中途半端がいちばん……つらいので」と言い捨てるつもりだった。

強がって、終わらせるつもりだった。

その瞬間。
がし、と、手首を掴まれた。

「……待て」

低く、震えた声。
鶴丸だった。

「嫌い……?そんなわけ、あるか」

掴む力が、ほんの少し強くなる。

「……俺が、距離取ってたのは」

視線を逸らしたまま、歯を噛みしめる。

「主が大事すぎて、どうしていいか分からなくなったからだ」

審神者の呼吸が止まる。

「守る立場のくせに触れたら壊しそうで、声かけたら余計な感情が出そうで……」

自嘲気味に笑う。

「情けないだろ。驚かせるのが得意な刀が自分の気持ちに一番驚いてるんだから」

ゆっくり、こちらを見る。
月の光に照らされた瞳は、冗談も軽口もない、真剣な色だった。

「嫌いなら、こんなふうに悩まねぇよ」

静かに、でもはっきりと。

「……突き放すなんて、できるわけないだろ」

手首を掴んだまま、少しだけ力を緩めて、
「主は……俺の弱いところ全部、引き出した張本人だ」
夜の静けさの中で、二人の距離だけがもう逃げ場なく近づいていた。
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