第10章 『 主と刀である前に 』
渋々という言葉が一番しっくりくる足取りで、鶴丸は縁側から離れへと続く渡り廊下を歩いていた。
月明かりに照らされた廊下は静かで二人の足音だけがやけに大きく響く。
「…………」
「…………」
言葉はない。
鶴丸は前を向いたまま。
審神者はその背中を見つめながら、何度も口を開きかけては閉じていた。
部屋の前に着いた時障子に手をかけた、その瞬間だった。
「……っ」
ぽろ、と。
自分でも驚くくらい、あっさり涙が落ちた。
「……ねえ」
鶴丸が、ぎょっとして振り返る。
「……どうして」
声が震える。
「どうして、最近……目、合わせてくれないんですか」
返事はない。
「どうして……話してくれないんですか」
感情が堰を切ったみたいに溢れ出す。
「私、何かしましたか?嫌われるようなこと……しましたか?」
鶴丸は何も言わない。
その沈黙が、いちばん刺さる。
「……どう思ってるんですか、私のこと」