第10章 『 主と刀である前に 』
「競争率、ねぇ」
鶴丸がゆっくりと豊前を見る。
口元は笑っているのに、声だけが妙に静かだった。
「別に、誰の席でもないだろ。縁側なんて」
「お? なんだ鶴さん、意外とムキになるじゃん」
豊前はわざとらしく肩を揺らす。
「俺はただの冗談だって言ってるだけだぞ?それとも……何か都合悪いちゃ?」
「……冗談の割に、妙に踏み込んでくるなって話だよ」
「踏み込む?へぇ、じゃあ聞くけどさ」
豊前はちらりと審神者を見る。
すぐに視線を戻し、鶴丸にだけ向かって言った。
「鶴さんは“冗談じゃない”の?」
その瞬間、空気がぴしっと張りつめる。
「……さあな」
鶴丸は一拍置いてから、いつもの軽い口調を装う。
「俺は驚き担当だからね。本気の話なんて似合わないだろ?」
「逃げたなぁ」
豊前はニヤニヤしながらも、どこか鋭い。
「驚き担当のくせに、一番驚いてるの自分ちゃ」
「……豊前」
鶴丸の声が、ほんの少し低くなる。
「からかうなら、もう少し相手選べよ」
「それ、ブーメランだと思うけど?」
完全に火花が散り始めた、その時。