第10章 『 主と刀である前に 』
「僕は水心子と一緒の今がいいかな。変える理由も特にないし」
「ほう」
「むしろ、水心子が一人部屋になったら絶対また無理するだろうしね」
冗談めかして言うけれど、どこか本気だった。
私は二人の顔を交互に見て、少し考え込む。
刀装の問題も、部屋割りの問題も。
どちらも、今までなら「近侍に任せます」で済ませていたかもしれない。
でも今は――
「……提案があります」
自然と、そんな言葉が口から出た。
「此処で私を含め三人だけで決めるではなく、ちゃんと皆さんのの意見も聞くと言うのは……?」
源頼朝が、少し意外そうに目を瞬かせる。
「全員?」
「はい、全員です。部屋のことも、装備のことも。使用も住むのも皆さんなんですから。ね?」
一文字則宗は、わずかに目を細めた。
「……なるほど。主らしい判断だ」
「え、そう?」
「“管理する”のではなく、“一緒に決める”。それは、意外とできる審神者が少ない」
そう言われて、少しだけ胸が熱くなった。
「だって……」
私は小さく笑って、続けた。
「もう、この本丸は“私一人のもの”ではないですから」
二人はほんの一瞬、言葉を失った。
その沈黙がこの本丸が“本当に一つの居場所になり始めている”証みたいで、私は少しだけ誇らしい気持ちになった。