第10章 『 主と刀である前に 』
それからの本丸は、表向きは驚くほど穏やかだった。
出陣の編成を見直し、無理のない部隊運用に切り替えた。
足りない資源は遠征で補うことになり、第三部隊までが定期的に外へ出るようになる。
演練も再開された。
勝敗に一喜一憂しながらも、誰もが以前より慎重だった。
内番は、残った刀たちで分け合う。
畑当番、馬当番、手入れの補助。
どれも些細な日常だけれど、“この本丸が、ちゃんと続いている”という実感を与えてくれるものだった。
そして、作戦会議。
今後の動きを決める場には、近侍のへし切長谷部、審神者の私、
休暇から戻った初期刀の陸奥守吉行。
さらに、三日月宗近。
鶴丸国永。
豊前江。
源頼朝。
一文字則宗。
かつて折れ、戻ってきた者たちを含めた顔ぶれが揃っていた。
「無理な出陣は避ける。主の霊力消費を抑えた編成を基本とする」
長谷部が淡々と説明する。
「遠征は第三部隊まで、固定ローテーション。主の負担が増えそうな場合は、俺らが止めるき」
陸奥守が、以前よりも落ち着いた声で言った。
「……主の身に異変があった場合、最優先で戦線離脱させる」
三日月の言葉は相変わらず穏やかだけれど、そこには確かな警戒があった。