第2章 『 後任審神者 』
「貴女は、本当に主になる覚悟があるのか」
逃げ場のない問い。
視線が、さらに鋭くなる。
試されているのが、はっきりとわかった。
私は、一度だけ息を吸った。
「……正直に言います」
声は小さい。
それでも、はっきりと。
「覚悟なんて、まだありません」
ざわ、と再び空気が揺れる。
「ですが」
言葉を続ける。
「皆さんが消えるかもしれないと聞いて……それを、見過ごすことはできません」
胸の奥が、熱くなる。
「ここに来た以上、途中で投げ出すつもりは、ありません」
大広間が、静まり返る。
刀剣男士たちの視線が、わずかに変わった――気がした。
言いたいことは言えた。
少なくとも、言い返すことができた、そう思う。
私は立ち上がり、そのままゆっくりと襖へ近づいた。
この場から一刻も早く離れたい。
取手に手を伸ばした、その瞬間だった。
――ばん。
乾いた音が響いた。
襖を叩いたのは、先ほどまで口論していた、あの刀剣男士だった。
「……え、まだ何か?」
嫌味を隠さず、そう言う。
けれど、返ってきたのは怒りではなく――なぜか、楽しげな笑みだった。
それが、妙に怖い。
「ふ……」
喉の奥で鳴るような笑い声。
(……何が始まるの)
嫌な予感が背筋を這い上がる。
それでも、ここで無視するのは、負けた気がして。
「……一度だけ、ですよ」
私はそう言って、しぶしぶ踵を返した。
足取りは重い。
けれど、逃げるよりは、向き合ったほうがいい――そんな意地だった。