第9章 『 小さな葛藤 』
陸奥守吉行は、その場に崩れるように膝をついた。
「……あれ?」
糸が切れたような力の抜けた声。
目の焦点がようやく、現実に戻る。
「肥前……?」
肥前忠広が、一瞬、言葉を失ってから、思い切り抱きついた。
「……っ、バカ!どんだけ心配させたと思ってんだよ……!」
陸奥守は何が起きたのか分からないまま、それでも確かに“戻ってきた”ことだけは、身体で理解していた。
その少し離れた場所で。
鶴丸国永は、主の姿を見て――思わず一歩、踏み出していた。
(無事で……よかった……)
腕が自然に伸びかける。
抱きしめて確かめたくて。
――生きているか。
――戻ってきたか。
――本当に、ここにいるか。
その寸前。
鶴丸は自分で自分を止めた。