第10章 優しさ
傑「してるよ。……無意識で、してるんだ。男がどれだけ堪えてると思ってるんだい?」
舌が耳の輪郭をなぞり、思わず喉の奥で声が漏れた。
その瞬間、傑の手が太ももに滑り込みスカートの裾をゆっくりと持ち上げる。
「……や、傑……。」
傑「“や”なら、もっと早く拒めたはずだよ。今のオマエは、私を受け入れようとしてる。……違う?」
問いかけるような声に、返事ができなかった。
いや、返事をする余裕がなかった。
彼の指先が腿の内側を撫でるたびに、呼吸が浅くなっていく。
傑「悟とは違うよ。……私は、オマエを壊したりしない。でも、私だって――君を抱きたいって、思ってる。」
顔を寄せられ、再び唇を奪われる。
さっきよりも深く舌が絡まり、息が苦しくなるほど求められる。
傑「もう、止まれない。……1晩だけ、私に預けて?」
その声が、甘く囁く呪いのように響いた。
傑「……1晩だけって、言ったけどさ。」
傑はみみの頬に手を添えたまま、伏せ目がちに微笑んだ。
傑「きっと……このままじゃ、足りないと思う。君の全部に触れたいって、ずっと思ってたから。」
唇が、そっと額に降りてくる。
そのまま眉間、瞼、頬骨そして唇。
まるで確かめるように1つ1つ丁寧にキスを落とされて、みみはただ、されるがままだった。
どこにも急いたところはない。
それなのに、肌の奥がじわじわと熱を帯びていく。
傑「怖がらないで。……私は、優しくするから。」